電子書籍制作を外注するとき、先に決めるのは依頼先ではありません。どの素材を誰へ渡し、何を受渡物とし、誰が何を確認すれば完了かを工程ごとに決めます。
僕は、過去の音声をテーマ単位に分け、電子書籍へ再編集したことがあります。既存のメルマガ、セミナー、ブログ、動画、音声を使うときも、出所、本の問いとの関係、権利、顧客・秘密情報を確かめてから採否を決めます。
この記事で読者が行うのは、紙・メモ・表を使った素材確認と、担当・受渡物・確認責任の割当です。最後に、どの素材を、誰が、何に仕上げ、何をもって完了とし、誰が最終判断するかを一工程ずつ説明できれば完了です。
制作へ渡す素材を確定する
最初に、制作へ渡す素材の採否を決めます。素材があることと、その本に使えることは別です。出所、問いとの関係、権利、公開可否を確認できなければ、担当作業や受渡物を決めても検証できません。
素材ごとに、次の表を埋めてください。
| 記録する項目 | 確認すること |
|---|---|
| 素材名 | 何を確認しているか分かる名前か |
| 素材の出所 | どの原資料、発信、収録から来たものか |
| 作成時期 | いつ作られた素材か |
| 本の問いとの関係 | 問いのどの部分へ答えるか |
| 使用権利 | 本文や制作工程で使える理由を説明できるか |
| 顧客・秘密情報 | 個人情報や公開できない内容を含まないか |
| 公開可否 | どの確認をもって公開候補にできるか |
| 採否 | 採用、要確認、不採用のどれか |
出所を原典へ戻って確認でき、本の問いに直接答え、権利、顧客情報、公開可否を確認できる素材だけを採用します。空欄が一つでもある素材は担当へ渡さず、要確認として確認者へ戻してください。
素材の採否や原典との関係を決められない場合は、次の記事で棚卸しからやり直します。
素材をテーマ単位の受渡物へまとめる
採用素材だけを残したら、一つの小さな問いごとに分けます。複数の問いを一つの受渡物へ混ぜると、何を完成とするか、どの原典と照合するかが曖昧になるためです。
僕が音声を再編集したときも、テーマ単位に分けることが出発点でした。これは再利用だけで品質が決まるという意味ではありません。重複、古い情報、不足情報を人が見つけ、確認箇所を分けるための整理です。
| 書く項目 | 判断すること |
|---|---|
| 答える小さな問い | 一つの受渡物が何へ答えるか |
| 使える事実・経験 | 採用素材から何を示せるか |
| 対応する原典 | どの原資料へ戻って確認できるか |
| 除く重複 | 他の受渡物と重なる内容は何か |
| 古い情報 | 現在の確認が必要な箇所は何か |
| 足りない情報 | 推測で埋めず、誰が何を確認するか |
| 期待する受渡物 | どの形と範囲になれば次工程へ渡せるか |
一つの受渡物が一つの問いへ答え、使った事実や経験から原典へ戻れれば候補にします。複数の問いが混ざる、根拠へ戻れない、古い情報を識別できない場合は分け直してください。
素材が不足する場合は一般的な説明で埋めず、最初のH2またはEBOOK-2-5へ戻ります。読者と本の問いが決まっていない場合はEBOOK-2-1へ戻り、扱う範囲を先に確定します。
担当作業と確認責任を工程表にする
受渡物の単位が決まったら、各工程を一行にして、担当作業と確認責任を対応させます。外注を使う場合も、担当へ渡す前に、素材、期待する成果物、確認者、完了条件を著者側で決めます。
僕は、自分で原稿を読み直した後に、文章の確認と図版制作を別の専門役割として依頼したことがあります。先に自分が担う編集を終え、残った工程ごとに必要な役割を分けました。
| 工程表の欄 | 書く内容 | 空欄の場合の扱い |
|---|---|---|
| 素材の出所 | 使用する原資料と場所 | 素材確認へ戻す |
| 使用権利 | その素材を使える理由 | 作業を開始しない |
| 本の問いとの関係 | どの問いへ答える工程か | 問いを一つに絞る |
| 担当する人 | 誰が作業するか | 担当を決めるまで停止 |
| 担当作業 | 何を行うか | 一つの作業へ分ける |
| 期待する成果物 | 何を受け取るか | 受渡物を定義し直す |
| 確認者 | 誰が成果物を照合するか | 作業を開始しない |
| 完了条件 | 何をもって完了とするか | 条件を一文にする |
| 最終判断者 | 誰が次工程・公開可否を判断するか | 作業を開始しない |
素材、担当作業、成果物、確認者、完了条件が一対一で対応した工程だけを実行候補にします。主張、根拠、権利、事実、品質、公開可否の最終判断は、外注先へ移しません。
担当へ渡す前に、各行へ確定した情報 / 受取後に照合する項目 / 不合格なら戻す工程を追加します。確認者と担当者が同じ完了条件を読める状態にしてから、実行候補の工程だけを渡してください。
受渡物を確認し、完了か差戻しかを決める
受渡物を受け取ったら、担当者の自己申告だけで完了にせず、工程表の完了条件と照合します。次の確認表に空欄や不一致が一つでもあれば、具体的な差戻し理由を一つ付けて同じ工程へ戻します。
| 確認項目 | 完了とする条件 | 差戻し理由の書き方 |
|---|---|---|
| 完了条件との一致 | 工程表で決めた範囲を満たす | どの条件が未達かを書く |
| 原典との一致 | 元の事実・経験と対応する | 一致しない箇所と原典を示す |
| 事実 | 確認できる内容だけで構成されている | 未確認の記述を一つ示す |
| 権利 | 使用可否を説明できる | 確認できない素材を示す |
| 顧客・秘密情報 | 公開不可情報が残っていない | 削除・確認する箇所を示す |
| 品質 | 本の問いへ答え、読者が判断できる | 問いと合わない箇所を示す |
| 公開可否 | 最終判断者が確認できる | 未確認の領域を示す |
すべてを確認できれば完了し、完了した受渡物だけを次工程へ渡します。空欄や不一致があれば、複数の修正をまとめず、最初に戻す一項目を決めてください。
素材、担当作業、受渡物、確認者、完了または差戻しまでの流れを、次の図で確認します。
出所・権利・公開可否
一工程、一役割
形と範囲を明記
原典と完了条件を照合
次工程へ進む基準
制作全体が止まった場合は、担当先を増やす前に、停止した一工程、確認できた事実、まだ分からない理由を記録します。停止点を特定できない場合は、次の記事へ戻って工程別に診断してください。
最後に、どの素材を、誰が、何に仕上げ、何をもって完了とし、誰が最終判断するかを一工程ずつ説明します。さらに、不合格時に戻す工程と差戻し理由まで示せれば、電子書籍制作の役割分担と確認責任は確定です。
公開前の確認領域が曖昧な場合はEBOOK-2-6、全体の目的を見直す場合は電子書籍マーケティング総合ガイドへ戻ってください。
電子書籍制作を外注する前に、役割を四つに分ける
電子書籍制作の外注先を探す前に、企画、執筆・編集、デザイン、入稿・公開確認を分けます。全部を一括で依頼すると、誰が内容と権利を判断するのかが曖昧になりやすいためです。
| 役割 | 依頼時に渡すもの | 著者側に残す判断 |
|---|---|---|
| 企画 | 読者、問い、扱う範囲 | 本の約束と採否 |
| 執筆・編集 | 原典、構成、表記基準 | 事実、主張、公開可否 |
| 表紙・図版 | 約束、用途、権利条件、納品形式 | 本文との一致と使用権 |
| 入稿・公開確認 | 確定原稿、メタ情報、確認表 | 最終公開判断と公開後表示 |
費用や納期だけで委託先を決めず、成果物、修正範囲、権利、確認者、完了条件を一行ずつ残します。外注しても、読者への約束と公開責任は著者側に残ります。












